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一 括 講 読

投稿時間:01/07/22(Sun) 12:39
投稿者名:涼子
Eメール:ryou@ah.com
URL :
タイトル:矯正中の噛み合わせの確保について
初めまして、質問させて下さい。

『 顎運動(物を噛む時の顎の動き方)はひとりひとりが長い年月を経て作り上げ、獲得した独自のシステムで、年を重ねるに連れ身体の他の器官と連携しながら緩やかに変化(老化)してゆくものです。しかし、残念な事に、虫歯や入れ歯などの歯科治療が噛み合わせ(顎運動)を急激に変化させてしまうことがあるのです。その結果、思いもしなかった身体の不調に見舞われてしまうことがあります。最近ブームになっている歯列矯正でもそうしたことが起こっています。特に、二十才以降に歯並びを変える成人矯正にはあまり知られていない副作用が出る場合が多いのです。

 歯並びを整えるには、ワイヤーを歯に付けて力をかけ、歯を移動させます。この時、歯を並び変えるスペースを確保するために、上下の第一小臼歯(犬歯の奥隣)を抜歯する事が多いのです。見かけを良くする為に健康な歯を抜く事自体にも問題がありますが、例え抜歯をせずとも歯を移動させ、歯並びを変化させる訳ですから、それに伴って上下の歯の噛み合うポイントも変化し、ズレが生じます。するとそれまでと違った噛み方(顎運動)をせざるを得ません。つまり、顎の筋肉の働かせ方やその脳神経回路を、新たに獲得しなければいけないのです。しかし、このような噛み方の急激な変化に身体が対応しきれずに、歯や顎の痛み、頭痛、めまい、吐き気、精神的なパニックなどを起こしてしまう事があるのです。例えるなら右利きの人に左手で箸を使ったり、字を書くことを無理やり強制するようなものです。特に、噛み方を含め身体の様々なシステムが完成されている成人に対する歯列矯正は、こうした副作用とも呼べるリスクの比率が高いのです。歯は食べ物を咀嚼する事が最大の役目ですから、多少歯並びが悪くても、良く噛めるという機能があれば見かけは二の次で良いのです。

 本来、歯列矯正は噛むという機能回復のための治療法なのですが、最近は美容目的だけで成人矯正をし、身体の不調を訴える人が後を断ちません。見かけの歯並びは良くなっても身体が悪くなったのでは費用と時間をかける意味がありません。歯列矯正をしようとする人は、こうしたリスクがあることも充分理解し、くれぐれも慎重に対応して下さい。』

って、あるHPに書いてあったのですが、実際はどうなのでしょう?
矯正を考えていたのですが、ちょっと心配になってしまいました。
そこで質問なのですが、矯正による歯の移動中の
噛み合わせの確保はどうなっているのでしょうか?
器具を装着している間は、ずっと噛み合わせが悪い状態で
過ごさなければいけないのですか?
よろしく御願いします。

投稿時間:01/07/24(Tue) 10:11
投稿者名:矯正専門医
Eメール:fukumashi@yokohama.email.ne.jp
URL :
タイトル:Re: 矯正中の噛み合わせの確保について
まずテレビで言っている事を、全て信じるのは危険です。テレビで重要なのは真実より視聴率です。
まして個人のHPは色々な人が色々な個人的意見を書いています。

上記の事をその先生は何故、「日本矯正歯科学会」「日本成人矯正歯科学会」に問題提議しないのでしょうか?

当院にも不定愁訴(頭痛、めまい、吐き気、精神的なパニックなど)を訴えて来院した症例も少なくありません、顎位が原因と予測して正しい顎位を見つけてそこに矯正治療で咬合出来るようにしたら治癒した症例も少なくありません。
つまり矯正治療中・後で治癒した症例も多いのです。

しかし、顎位が本当に原因かどうか証明するのは困難です。
つまり矯正治療おかげで顎関節症や不定愁訴が治癒したかどうかはなんとも言えないということです。

治療中は今まで悪いなり咬んでいた咬みあわせを壊しながら治していきます。その時に顎位は顎関節の安定した位置になるため矯正治療で顎関節症が治癒するとも言われています。

また矯正後、数年し再発する症例もあります。
再発した患者さんがHPを書いた先生の所に来院して既往歴を喋ります。
HPを書いた先生は矯正医に治療前の状況を確認するでしょうか?
HPを書いた先生は矯正治療が原因と思うのは勝手ですが、決めつけるのは危険です。
また、矯正既往患者さん数症例で判断するのは統計学的にも有意差が見られるとは言えません。

もちろん矯正治療がそれらの原因にならないとも決めつけられません。

そのために疫学調査をし発表して、検討する場として学会があるのです。

小臼歯抜歯に関しては、小臼歯抜歯する理由に「見た目」と書いてありましたが、最近、小臼歯を抜歯しないで矯正治療しいて口唇の閉鎖不全を訴えて来院する症例が多くなってきました。
分析すると上下顎前歯が3SD以上突出しているケ−スも珍しくありません。大抵、抜歯して治療しなおします。
口唇の閉鎖不全が改善されるので当然「見た目」も変わります。しかし「見た目」を変えるために抜歯したわけではありません。成人で小臼歯抜歯症例をHPに記載してあります。
http://www.asahi-net.or.jp/~XT4K-FKMS/orthodontic.html
参照
この患者さんは術後のプロファイルをすごく気に入ってHPに乗せるのも拒みませんでした。
「見た目」が気きいるか気に入らないかは本人の好みです。もちろん治療前に「見た目」の予測をして患者さんに了解を求めます。もし、この症例で口唇が後退する(見た目がかわる)のを拒んだら私は治療しなかったでしょう。我々は美容整形をやっているのではなく、前歯の位置を科学的に分析して治療目標を設定して予測をするわけです。患者さんが出してくれとか引込めてくれとかで治療ゴ−ルは決めません。


当院では400人近く成人矯正(初診20歳以上で検索)を行なっていました。しかし矯正治療が原因と思われてそのような状態になった症例は記憶にありません。

顎関節症は矯正治療前にスプリント療法をして発症しない顎位を確認して治療します。
顎関節症や不定愁訴が残存しているケ−スはあります。それらのケ−スは術前より症状がありました。

たとへば、初診時に口を開けると顎関節がクリック(カキカキ)音があったとしても本人自覚していない症例が殆どです。そこで矯正治療をはじめて、クリックに気づくと患者さんは「矯正治療が原因ではなからおうか?」と思う場合もあります。

当院は治療前に顎関節に関して、現症、筋圧痛、顎関節音、顎関節断層写真、半調節性咬合器付着、顎位の中心位確認、中心位をセファロトレ−スへ変換、顎運動解析(シロナソ、筋電図)等を顎関節症があろうとなかろうと全症例に検査しています。上記の検査は歯並びを治すのに必ずしも必要ではありませんが、顎関節症状が出たときに原因を調べるのに必要なデ−タとなってくるのです。

歯科学・歯科矯正学は学問です。学問である以上、論理的に考えていく必要があります。
臨床経験は貴重ですが、疫学的裏ズケがないと、偏見で見て、冒険をやってしますのです。

投稿時間:01/07/24(Tue) 15:09
投稿者名:涼子
Eメール:ryou@ah.com
URL :
タイトル:どうしましょう。。
お返事ありがとうございます!
とても、詳しい説明で参考になりました。

> 上記の事をその先生は何故、「日本矯正歯科学会」「日本成人矯正歯科学会」に問題提議しないのでしょうか?

そう言えばそうですね。。
ちなみにこちらのHPの先生です。
ttp://www.mmpmoo.com/hayashi/index.html

なんでも市波治人先生(顎偏位症という本を執筆)と言う方の
理論が基本にあるようです。
最近では「いい歯医者悪い歯医者」という本も執筆されています。
読んだ時はかなり衝撃的なことが書いてあって
ここまで歯科業界の裏話を公表していいのかな?とも思いましたが。。(^^;)
素人の私には何処までが真でどこまでが虚なのかは分かりません。
どの先生も意見が違うので何を信じたらいいのか分からないと言うのが
正直な気持ちですね。ホント、どうしましょう。。
安易に近所の歯医者さんに行くのさえ恐くなってしまいました。

> 小臼歯抜歯に関しては、小臼歯抜歯する理由に「見た目」と書いてありましたが、最近、小臼歯を抜歯しないで矯正治療しいて口唇の閉鎖不全を訴えて来院する症例が多くなってきました。
> 分析すると上下顎前歯が3SD以上突出しているケ−スも珍しくありません。大抵、抜歯して治療しなおします。

ある矯正の先生は抜歯(第一小臼歯)をして
前歯を引っ込める矯正をすることで口の中の部屋が狭くなって
舌が喉に落ちる危険がある。よって就寝時に酸素が取り込みにくくなって
色々な不定愁訴が現れるのだ。と仰られています。
もちろん、その先生は無碍に抜歯をするなと断定しているのではなく
場合によっては抜歯せざるを得ない場合も出てくるとは言っています。
何処の矯正医院もその辺りは考慮してくれているものでしょうか?
実際のとこはどうなんでしょう?

> 歯科学・歯科矯正学は学問です。学問である以上、論理的に考えていく必要があります。

歯学と医学の両方を考慮している歯医者さんはまだ少ないのでしょうか?
素人考えですが、歯も体の一部なわけですから全身的な部分も加味して
治療にあたってくれる方が安心ではあります。
何故、歯学と医学(一般的な診療科も)は別々に部分的に捉えるような
システム?になってしまっているのでしょうか?
こういったことは学会などで問題提起されないのでしょうか?
一患者として心配でなりません。。

投稿時間:01/07/24(Tue) 16:15
投稿者名:矯正専門医
Eメール:fukumashi@yokohama.email.ne.jp
URL :
タイトル:Re: どうしましょう。。
現症を診ていないので、インターネットで答えられるのは限界があります。
色々な先生に診てもらって、自分なりに納得のいく先生に診てもらうのがいいかと思います。
しかし、一度治療を開始したら、その先生を信じて最後まで診ていただいたほうがいいと思います。
治療途中で転医すると結局、患者さんの為にならないからです。

投稿時間:01/07/25(Wed) 11:00
投稿者名:涼子
Eメール:ryouko@ah.com
URL :
タイトル:ありがとうございまず
お返事ありがとうございました。
色々な先生に見てもらって
それぞれ意見が違うので悩んでいるんです。。
素人には判断できませんよ〜。('_`)ハァ
それだけ、矯正治療に関しては
確立したものがないと言うことでしょうか?
ちなみにアメリカの矯正医と日本の矯正医では
骨格的な観点からも治療方針はかなり異なってくるものですか?

医学と歯学の融合の件についてですが
本当にどうにかならないものですかね。。
これだけ医学が進歩してるのに、
何故、誰も立ち上がろうとしないのでしょう。。
厚生省もなにしてるのかなぁ。。
実際、そのような観点から医療を捉えている先生が
教育の現場の先頭にたって、現状を打破してもらいたいと
切に願うばかりの今日この頃です。

投稿時間:01/07/25(Wed) 12:17
投稿者名:矯正専門医
Eメール:fukumashi@yokohama.email.ne.jp
URL :
タイトル:Re: ありがとうございまず
> お返事ありがとうございました。
> 色々な先生に見てもらって
> それぞれ意見が違うので悩んでいるんです。。
> 素人には判断できませんよ〜。('_`)ハァ
> それだけ、矯正治療に関しては
> 確立したものがないと言うことでしょうか?
> ちなみにアメリカの矯正医と日本の矯正医では
> 骨格的な観点からも治療方針はかなり異なってくるものですか?
>
> 医学と歯学の融合の件についてですが
> 本当にどうにかならないものですかね。。
> これだけ医学が進歩してるのに、
> 何故、誰も立ち上がろうとしないのでしょう。。
> 厚生省もなにしてるのかなぁ。。
> 実際、そのような観点から医療を捉えている先生が
> 教育の現場の先頭にたって、現状を打破してもらいたいと
> 切に願うばかりの今日この頃です。

私は全米矯正学会とアングル矯正学会南カリフォルニアの正会員で年に3〜4会渡米しています。
アメリカの方がよっぽど(同じ症例なら)小臼歯を抜く傾向にあります。

アメリカでも日本でもヨーロッパでも寝る暇を惜しんで臨床家や大学人が研究しています。

涼子さんが医療不信を持っているなら矯正治療は推奨できません、色々なリスクを伴うのも事実です。

歯並びが悪くても、直接的に生命に危険はありません。

投稿時間:01/07/25(Wed) 12:14
投稿者名:黒猫
Eメール:qanda@kdent.net
URL :http://www.kdent.net/qanda/index.htm
タイトル:Re: ありがとうございまず
間に口を挟ませて頂きます。
私は矯正医ではなく、一般歯科医なので、貴殿の質問の後半のみに答えさせて
頂くことに致します。

> 医学と歯学の融合の件についてですが
> 本当にどうにかならないものですかね。。
> これだけ医学が進歩してるのに、
> 何故、誰も立ち上がろうとしないのでしょう。。
> 厚生省もなにしてるのかなぁ。。
> 実際、そのような観点から医療を捉えている先生が
> 教育の現場の先頭にたって、現状を打破してもらいたいと
> 切に願うばかりの今日この頃です。

No.511 の書き込みでも書いてありましたが、涼子さんは誤解なさっていらっしゃる
みたいですね。
歯科医は全身疾患に対して、常に気を使っています。
また、歯科治療上考慮すべき医学の教育もカリキュラムの中で学んでいますし、
日々の臨床で遭遇する患者さんの疾患に対して、常に勉強しています。

医科と歯科の分離は、ライセンス上の問題だけであり、アメリカ等に倣って
制定されたものだと認識しています。
(日本にも医科、歯科、両方のダブルライセンスの先生も数名いらっしゃる
と聞いております)
ドイツなどは、医科のライセンスを取得した後に、次のステップとして歯科の
ライセンスを取り歯科医となる、という方法を採っています。
一見、理想的に思えますが、歯科医1人を生み出すまでの費用がかさみますので、
当然、治療費の高騰、という形で患者さんに跳ね返ってきます。
国の制度の問題ですが、どちらが良いんでしょう?

余談ですが、日本の医療費は高い、と一般に思われていますが、健康保険や生命保険の
関係から日本人は病院好き、入院好きになってしまって全体の医療費は高く
なっていますが、「一つの処置」の価格は他の先進国と比べて格段に安いんです。
例えば「歯の神経(歯髄)を取る」(抜髄)という処置の価格は、アメリカ等
に比べて、5分の1〜10分の1程度です。

本題にもどします。
医療が高度化していく中、ライセンス上既に分離している歯科のことよりも
医科のライセンスの分離を考えた方が良いと思います。
例を挙げると、産科と脳外科のライセンスが同じ、という方が問題じゃありませんか?
もちろん、歯科と同じように、まずは広く浅く学んだ上に、選択した分野に
ついて深く学ぶのです。
その上で、現在よりもさらに分業をすすめていく方が、変にオールマイティー
の医師を作るよりも合理的だと考えます。

如何でしょう?

投稿時間:01/07/25(Wed) 14:03
投稿者名:涼子
Eメール:ryouko@ah.com
URL :
タイトル:ありがとうございます♪
矯正専門医先生、黒猫先生、丁寧にお答えして頂いて
どうもありがとうございました。
自分なりに色々と検討してみたいと思います。

投稿時間:01/07/28(Sat) 12:08
投稿者名:黒猫
Eメール:qanda@kdent.net
URL :http://www.kdent.net/qanda/index.htm
タイトル:Re: ありがとうございます♪
> 矯正専門医先生、黒猫先生、丁寧にお答えして頂いて
> どうもありがとうございました。
> 自分なりに色々と検討してみたいと思います。

涼子さんのご覧になったHPを覗いてきました。

私は本を読んだわけではありませんが、項目を読んだだけで押して知るべしです。
本の内容を否定するつもりは毛頭有りませんが、書かれた先生の自論を展開
しているだけの本のようですね。
サブタイトルや帯を見ても購買をそそるような文句が羅列してあります。

本の内容やHPの内容は、本を書いた先生やその周りの先生が考えた自論であり、
歯科界の通説、定説とはだいぶ隔たりがあります。
「矯正専門医」先生が仰っているように、学会等で発表された内容のものでは
ありません。
自論が正しく、多くの歯科医の現在の治療法が誤っているならば、その誤りを
正し、多くの患者さんにより良い治療を提供しようと考えるなら、通説、定説を
覆さなければなりません。
そのためには、学会での発表が不可欠です。
なぜ、そうしないのでしょう?
歯科医を相手に説得するだけの根拠を持ち合わせていない理論なのでしょう。

本を書くという行為は、経済行為なので責める事はできません。
本を売って儲けることが目的なのですから。
他のスレッドでも書きましたが、テレビも同様です。
ある先生が考案した、まだ海のものとも山のものともつかないような、確立して
いない治療法を、新しい治療だと報道します。
テレビは、視聴率のために動いているものですので、これも責める事はできません。
 
情報過多の時代です。
一つの記事、一つのテレビ、一冊の本に左右されないことが大事だと思います。
歯の治療法に係らず、ほんとに画期的な方法、理論、器具、ならいろんなところから
情報が入ってくるはずです。



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