投稿時間:00/12/12(Tue) 11:16 投稿者名:井上 吉登
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タイトル:Re: 心臓疾患のある娘の虫歯治療
> 心臓疾患(術済み)のある9歳11ヶ月の娘の虫歯治療についてお聞きします。6歳きゅう歯2本(そのうちひとつは虫歯が深いらしい)が3日前に見つかりました。現在アメリカに在住しており、歯科治療の際は、心臓の方の主治医から、American Heart Associationの基準(治療一時間前に1250mgのアモキシシリン服用)に従うようにとの指示を受けています。 > > 何人かの歯科医に連絡を取ったところ、薬を服用すれば、後の治療は一般の人と同じである、と言われました。ただ、歯科医によっては、それほど心配しなくても良いという人、治療を大変と考える人等、いろいろで、どの歯科医に治療を依頼して良いのか解らず困っています。 > > 心臓の弁に少し逆流が残っているため、心内膜炎感染が非常に心配です。虫歯を発見した歯科医は、削ってみないとどのくらいの深さなのか分らないといいます。 > また、この歯科医は感染に関してそれほど神経質ではない様子、といいますのは、「クリーニング程度だったら、抗生物質もいらないのでは?」といいながらクリーニングをしてくださったのです。こちらからは、心臓の専門医から、抗生物質を取るように言われていますと説明したのですが。 > > 別の歯科医にセカンドオピニオンを聞いてから治療を開始しようと思っていまが、なるべく早く治療をした方が良いとも思い、あまり先延ばしになってしまうのは、虫歯も進行してしまうので、良くない事ではないかと心配です。 > > また、治療方法ですが、2本の虫歯がありますが、2本とも一度に治療してもらうのが良いのか(別々にやると抗生物質を2度取る事になる)気になるところです。先生は麻酔を上下両方やる事を心配なさっていたようでした。 > どうしたら良いか一緒に考えていただけると幸いです。 > > > > 先天性心疾患の患者で、心臓手術後の経過が良ければ抗生物質の術前投与は行わなくても問題ないと言う歯科医はいます。確かに、完全に心内膜が治癒していたり軽度の心室中隔欠損症の場合、歯科治療をして感染性心内膜炎を起こす確率はとても低いようです。しかし、心内の血流にまだ問題があれば感染の危険性は高いと思われます。原則として、先天性心疾患の子の出血を伴うような歯科治療(歯を抜く、神経をとる、歯石除去などの場合)は抗生物質の術前投与が必要です。日本においても先天性心疾患の認識があまり普及していない面もあります。現在の日本でも、歯科医の認識不足のために先天性心疾患の子供の歯の治療の際、抗生物質の術前投与を行わなくて感染性心疾患となる患者が時々発生しています。その場合、虫歯の治療を終えてから風邪をひき、発熱が治らないことで主治医の診察を受け、感染性心内膜炎の診断で緊急入院となっています。したがって、ご相談の内容からすると、ぜひともAmerican Heart Association の勧告に従って、抗生物質の術前投与を行った方がよいと思われます。ただし、American Heart Associationの勧告に忠実にアモキシリンの投与量を決めると、人種的な問題で日本人にはやや多めのようです。アメリカ人並に投与されると日本人では、頭がふらふらになるようです。それを避けるため日本人の場合、やや量を減らすか、他の抗生物質に変更することも行われています。 治療カ所が2カ所あるとのことですが、短時間内に治療が可能であれば同時に行った方がベターだと思います。恐らく、麻酔の量が気になるものとおもわれますが、麻酔量は少ない方が良いに越したことはありませんが、下手に量を減らすと虫歯を削っていて痛みがでます。その影響で体内で血中に出るアドレナリンの量が多くなり、その影響の方が麻酔より心臓に大きく負担となることが考えられます。日本の場合生活に制限のない心臓疾患の子では、キシロカインカートリッジ1.8mlを1から2本使用するのであれば、ほとんど問題ないといわれています。もし、心配なようでしたら、大きな病院(心臓外科等が併設されている)の中にある歯科で治療してもらうのがよいと思います。
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